授業の中のSDGs

京華女子のSDGsはKSPだけではありません。日々の授業でもSDGsに触れています。
ここでは、SDGsを扱う授業の一部をご紹介します。
随時更新していきますので、楽しみにお待ちください。
 

国語(中学一年生)

 中学1年生の国語の授業では、11月後半に、川上浩司さんの評論文「『不便』の価値を見つめ直す」を取り扱いました。便利を追求し続ける社会ではなく、不便のよい面という「不便益」へと価値を転換することを文章から学びました。

 その一環として、身近な「つかう責任」に目を向けるねらいで、京華女子の学校生活のなかでの「不便益」をまとめた「不便新聞」を生徒同士で作成しました。特に京華女子の現校舎は古く不便な点がたくさん見つかりましたが、「不便=悪いこと」という固定観念をそれぞれの生徒が脱け出そうと「不便益」の案を根気強く練り続ける姿が見られました。

 持続可能な生産と消費のためには、今の価値観から見ると不便になったり、我慢を強いられるように思われたりする面が考えられます。しかし、今回の授業が、発想の転換によって「不便益」を見出すきっかけとなり、循環型社会を楽しめる観点の材料になればと願っています。

EHD(中学二年生)

 中学2年生のEHDでは、「偉人新聞」の作成と発表を行いました。

 EHDというのは、「Education For Human Development」の略称で、京華女子中学オリジナルの全人教育プログラムです。生徒は中学三年間、週一回の授業でEHDを学び続けます。いくつもあるプログラムの内、中学二年生は「偉人新聞」の作成がメインとなっています。

 今回、偉人の調査対象をあえて「女性」にしぼることで、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」について考えてもらいました。
 生徒は偉人新聞の作成を通じて、女性が「差別や偏見」と闘ってきた歴史や、地位改善のために取組んできたことへの理解を深めました。差別や偏見が完全になくなったわけではない世の中で、これから自分は女性としてどのように生きていくべきか、考える機会になりました。

歴史(中学二年生)

 中学2年生では、11月に宿泊行事「長野ヒストリーツアー」を計画しています。この行事のメインイベントは、長野県にある「無言館」と「松代象山地下壕(松代大本営)」の見学で、目標16「平和と公正をすべての人に」に該当します。

 授業では事前学習として、無言館に展示されている絵の考察と、松代大本営を題材にしたアニメ「キムの十字架」の鑑賞を行っています。当時の人々の考えや立場に共感することで、戦争は二度と繰り返してはならないことを再確認するとともに、平和の尊さに対する理解を深めます。

探究Ⅱ(高校二年生)

 高校二年生の探究は、各企業からのミッションに取り組みます。生徒はインターンシップのように希望する企業に入社し、グループを組んで課題に取り組むのです。そして、仕上げた課題は全国大会にエントリーします。

 三菱地所から与えられたミッションは、「未来を生きる私たちが、『そこに集う喜び』を感じられる場と仕組みを提案せよ!」です。ミッションを与えられて最初の授業では、生徒はKJ法を用いてアイデア出しをしました。まだまだアイデア段階ですが、高齢者も障害者も、若者も赤ちゃんも、すべての人が利用できるサービスをつくろうと意気込んでいました。探究Ⅰで学んだ思考ツールをいかし、さらに深めていきます。

 令和元年度から導入したプログラムですが、初年度は1チームが佳作を受賞したものの全国大会には行けず、壁の厚さを感じました。しかし、令和二年度と三年度とどちらも佳作と優秀賞をそれぞれ1チームが受賞し、全国大会に進出しました。320校で約6万1000人が取り組んでいるプログラムに、二年連続で全国大会で発表できたことは大変名誉なことです。

 今後もSDGsを学びつつ、全国大会での発表を目指して探究的な活動に取り組んでいきます。

国語表現(高校二年生文系)

 令和3年9月に行った国語表現の授業では、「超高齢社会の課題」テーマに行いました。

 超高齢社会が進むと限界集落・限界自治体という問題が生じ、目標3「すべての人に健康と福祉を」や11「住み続けられるまちづくりを」につながるのですが、今回はさらに、8「働きがいも経済成長も」と10「人や国の不平等をなくそう」も説明してしまおうと、脱線気味の授業です。

 超高齢社会の定義や人口推移予測などを説明し、介護施設などで必要とされる介護ロボットについて活用事例などを紹介した後、AIつながりで分身ロボットOriHimeをもってきました。難病や重度障害で外出困難な人々でも、OriHimeを活用すれば働きがいをえられることが、分身ロボットカフェの実験店から確認されています。これこそ、SDGsの「誰一人取り残さない(leave no one behind)」精神と言えるでしょう。OriHimeについて触れられる機会はそうそうないので、「超高齢社会」からの脱線はやむなしと判断しました。

 OriHimeについて知っている生徒はいないものと思っていたのですが、クラスに1人2人は知っており、頼もしく思いました。通常ですと意見文を書いて終わるのですが、短縮オンライン授業のため断念。意見文を書いてもらうのは、次の授業の楽しみにとっておきます。

家庭基礎(高校二年)

 家庭科では、毎年夏期休暇中に「ホームプロジェクト」を宿題として出しています。家庭科の授業で学んだことを実際に各家庭の中で活かしてもらいたいと思い、課題を見つけて取り組んだ様子をレポートにしてもらっています。さらに、夏期休暇明けの授業ではプレゼンテーションを行います。

 今年は例年にもまして、SDGsを意識した取り組みが多いように感じられました。古着をマスクにリメイクしたり、マイクロプラスチックの問題からリサイクルに取り組んだり、食品ロスの観点から今まで捨てていた食材で料理をつくったり。枚挙に暇がありません。そして、プレゼンテーションの生徒評価で高評価となるのも、SDGsを扱った発表でした。

 恐らく、それぞれの科目でSDGsを意識した取り組みをしているからなのだろうと思います。今年度からカリキュラム・マネジメントを作成し、各科目の内容や授業進度が一目でわかるようになり、横の連携ができるようになりました。あうんの呼吸で、同じタイミングで同じ内容を科目独特の視点で教えることができています。例えば、信仰の違いからくる問題について地理で学んだと思ったら、国語表現でグローバリゼーションの問題と解決策を学ぶといったように。同じように、SDGsも各授業で触れ、生徒に刺激を与えているからだと思います。

 教員が何も言わなくても持続可能性について考え、行動する。課題から生徒の成長が実感でき、嬉しく思いました。